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長く使えるからサステナブルJ-オイルミルズ「長徳®」シリーズの挑戦

長く使えるからサステナブル
J-オイルミルズ
「長徳®」シリーズの挑戦

長く使えるからサステナブルJ-オイルミルズ「長徳®」シリーズの挑戦取材メンバーの画像

写真: 左より、小原如恵、北谷祐介、鈴木豪、関口竹彦、青木亮輔

2023年8月25日 食品新聞社 岩下直樹

世界的な原材料価格の高騰、国内産業の課題である労働力不足、多様化する生活者ニーズへの対応と、食品業界を取り巻く環境は厳しさを増している。コロナ禍を経て、テイクアウトやデリバリー等の食の外部化が再加速する中で、業務用ユーザーはさまざまな課題に直面している。

相次ぐ食材の値上げ、光熱費、人件費の高騰によるコスト上昇とおいしさの両立。働く人の労働負荷・作業負荷の低減、快適な調理現場の実現、食品ロスの削減。さらには地球環境に配慮し、サステナブルな社会の実現に向けて、サプライチェーン全体でのCO2削減もテーマとなっている。

こうした中、J-オイルミルズでは2021年に新たな企業理念体系「Joy for Life® ~食で未来によろこびを~」を策定。おいしさ×健康×低負荷で、人々と社会、環境に貢献することを掲げ、サステナブルな社会の実現に向けた事業活動を推進している。

業務用食用油のフラッグシップ商品である長持ち油「長徳®」シリーズでは、ライフサイクル全体のCO2排出量削減効果を算定し、業務用食用油製品では他社に先駆け、CFP(Carbon Footprint of Products)マーク※を取得。長く使えて、働く人にも、環境にもやさしいサステナブルなオイルとしての展開が広がっている。低負荷を成長ドライバーに、サステナブルな価値創造企業を目指すJ-オイルミルズの挑戦をまとめた。

※CFPマーク
CFPマークはSuMPO環境ラベルプログラムで取得できるマークです。CFP宣言は、CO2の見える化を推進し、その削減を目指すことを目的とするプログラムで、LCA(ライフサイクルアセスメント)手法を用いて製品の原材料調達から廃棄・リサイクルに至るまでのライフサイクル全体における定量的環境情報を「見える化」(表示)する仕組みです。「見える化」された情報に基づき、提供者(事業者)と利用者(消費者等)間における環境負荷削減努力のための相互理解、コミュニケーションを促進します。

プロフィール

取材メンバー小原 如恵の画像

小原 如恵 業務用油脂マーケティング部 商品開発グループ
2020年入社

取材メンバー北谷 祐介の画像

北谷 祐介 ソリューション事業部カスタマーリンケージグループ 兼 業務用油脂マーケティング部商品企画グループ 兼 家庭用油脂マーケティング部商品開発グループ
2002年入社

取材メンバー関口 竹彦の画像

関口 竹彦 ソリューション事業部 
カスタマーリンケージグループ 兼 研究開発センター
2001年入社

取材メンバー鈴木 豪の画像

鈴木 豪 業務用油脂マーケティング部商品開発グループ長補佐
兼 研究開発センター
1997年入社

取材メンバー青木 亮輔の画像

青木 亮輔 研究開発センター イノベーション開発グループ
2014年入社

製品紹介

長徳キャノーラ16.5g缶の画像

業務用油脂製品「長徳®」シリーズは、おいしさはそのままに、揚げられる期間を長くするために開発した当社の技術「SUSTEC®」を活用し、通常の油より3割長持ちさせることが可能です。使用期間が延びることで天然資源である原料(穀物)の使用量を減らすだけでなく、耕作地面積の削減、サプライチェーン全体での「つくる」「はこぶ」「すてる」などの省力化につながります。

SUSTEC®の特徴2つのイメージ画像

新たな技術で生み出した長持ち油

タフネス・エコノミー、そしてエコロジー

「当店はサクッとおいしい、環境を考えた油で揚げています」。昨年から首都圏の大手スーパーの惣菜売場では、CFPマークを記載したメッセージボードが掲げられている。この取り組みを黒子として支えているのが、J-オイルミルズの業務用食用油「長徳®」シリーズだ。

「長徳®」は、独自技術のSUSTEC®(サステック)製法で加熱による劣化を抑制、一般的なフライ油よりも長く良い状態で使える食用油。おいしさが長持ちすることで、トータルコストを低減し、油の交換回数の削減による労働負荷の低減にもつながる。さらには油を長く大切に使うことで、原材料や物流に係わるCO2排出量を抑制し、サプライチェーン全体の環境負荷低減にも寄与するサステナブルなオイルとして注目を集めている。

「長徳®」の発売は2007年にさかのぼる。J-オイルミルズは早くから業務用ユーザーの課題に寄り添い、お客様目線の技術開発・商品開発を推進してきた。「長徳®」の開発を担当したソリューション事業部の関口竹彦氏は「長持ち油のニーズは昔からありましたが、技術的な部分での差別化が課題でした」と振り返る。

安定性の高いパーム油などをブレンドし、加熱劣化への耐性を高めた商品は当時から存在していたが、一般的な大豆油や菜種油とは風味や揚げ物の食感が異なり、ユーザーにとっては使いづらく、定着が進まなかった。油脂の配合を変えただけでは、他社製品との差別化が難しく、価格競争に陥りやすいという課題もあった。

惣菜売場や飲食店など、多くのお客さまが使用する一般的な食用油の原料である大豆、菜種をベースに、長持ちする油はできないか。J-オイルミルズでも早くから長持ち油の開発に取り組んでいたが、なかなか思うような成果を生み出せずにいた。

長持ち油の開発を任された関口氏は「長持ち油のテーマを引き継いだときは、果たしてできるのかとも思いましたが、手さぐりで研究を重ねるうちに、これは何としても実現しようと。コストダウンがお客様のニーズでしたが、油が長く使えるようになれば、さまざまな可能性が広がる期待感もありました」と語る。

日々研究を重ねる中で、油の原料である種子そのものに劣化を抑制する成分が含まれていることに着目。新たな製造技術を確立し、従来は不純物として取り除かれていた微量成分の働きを引き出すことで、大豆・菜種油のおいしさはそのままに、加熱時の劣化を抑制する長持ち油を実現した。

新たな技術は、タフネス・エコノミー・エコロジーの頭文字をとって、「TEE-UP」製法と名づけられ、現在の「長徳®」を支えるSUSTEC®(サステック)製法の根幹となっている。耐久性(タフネス)、経済性(エコノミー)に加え、当時から環境への配慮(エコロジー)をテーマに据えてきたことは興味深い。

今日ではサステナブルという考えが当たり前となっているが、「長徳®」(前身の長調得徳)が発売された2007年当時はまだまだ一般的ではなく、エコという言葉が広がりはじめた段階で、時代の先駆けとなる取り組みだった。

現在、お客様と開発をつなぐ先述のソリューション事業部の関口氏は「耐久性、経済性だけでなく、環境にも目を配り、新たな技術で商品化できたことは喜ばしかったです。苦労も多かったですが、「長徳®」が世の中で広がってきたことはすごくうれしいですし、スタンダードな油として国内はもちろん、世界にも広がっていってほしい」と夢を語る。

お客さまに寄り添い、提供価値を拡充

働く人にもやさしいフライ油を

2007年に発売された「長調得徳」(「長徳®」の前身)シリーズは、業務用ユーザーになじみのあるキャノーラ油、サラダ油、白絞油の3品種をそろえ、長く使えてトータルコスト削減につながる食用油として注目を集めた。

J-オイルミルズの技術が生み出した、これまでにないフライ油で、お客様がメリットを実感できる商品だったが、「最初はお客様も半信半疑で、長持ち油の価値を理解してもらうことが第一歩でした」。業務用ユーザーとのつなぎ役となるソリューション事業部の北谷祐介氏はそう振り返る。

業務用のお客様にとって、あくまでもフライ油は揚げるための油であり、毎日大量に使うだけに価格を重視する得意先も多い。北谷氏は「長調得徳」発売当時を振り返り、「大豆、菜種の一般的な油で、長く使えてコスト削減につなげるという商品はこれまでありませんでした。当社の新しい技術で、お客様にメリットを感じて頂ける長持ち油の価値をどのように伝えていくか。社内では毎日のように、長持ち油の提供価値を議論していました」と語る。

折しも2007-2008年にかけて世界の食糧価格は急騰、シカゴ大豆は2008年7月には当時の史上最高値となる1ブッシェル16ドル58セントを記録した。国内でも食用油の値上がりが本格化し、長く使えることでトータルコストを抑制できる「長調得徳」への関心は急速に高まっていった。

「長く使えて経済的という目に見える価値を提供できただけでなく、環境に対するメリットも考えた油であることを説明し、お客様のご理解を頂きながら、採用件数が増えてきたことに手応えを感じていました」。

幅広い業務用のユーザーを持つJ-オイルミルズでは早くから、個々のお客様の現場に即したフライ油のオペレーション改善などの取り組みを推進。おいしく・効率的に揚げるためのノウハウは蓄積していたが、「こうしたソフト面での提案だけでなく、油の劣化や臭いを抑える「長調得徳」が加わったことで、ハード面での提案が広がり、私どもの強みである提案営業のレベルアップにもつながった」と振り語る。

発売当初はトータルコスト低減の機能が注目されたが、実際に導入頂いたお客様の現場では「油の臭いが気にならなくなった」「油の交換回数が減り、作業が楽になった」など、働く人の作業負荷や労働環境改善への評価が高まっていったという。

また、「当社の長持ち油は、おいしく揚げられる期間を長くするために開発された技術で、油の劣化を抑えるということは、油の良い状態をできるだけキープし、おいしさの面でも高い評価を頂けた」と説明する。

発売10周年を迎えた2018年には「長調得徳」の機能価値向上を実現。一般的な食用油より2割長持ちする製品を、3割長持ちにグレードアップし、匂いの発生や揚げ油の交換目安である着色や粘度の上昇をこれまでよりも抑え、さらなる進化を実現した。

先述の北谷氏は「「長徳®」を発売して15年間あまりで、人手不足はさらに深刻化し、調理現場で働く人の作業負荷の軽減、さらには環境への配慮も求められるようになっています。これからもお客様に寄り添い、「長徳®」の機能向上を実現していくとともに、さまざまな課題やニーズを捉えた提案力を進化させていきたい」と語る。

長く使えるから、サステナブル

CFPマークを取得

J-オイルミルズは2021年4月、第6期中期経営計画のスタートとともに、新たな企業理念体系「Joy for Life®~食で未来によろこびを~」を制定。おいしさ×健康×低負荷で、人々と社会と環境へのよろこびを創出することを掲げ、サステナブルな社会の実現に向けて新たな一歩を踏み出した。

低負荷を成長ドライバーに、業務用食用油のフラッグシップ製品である「長調得徳」を「長徳®」シリーズにリブランディング。独自技術のTEE-UP製法を「SUSTEC®」に名称変更するとともに、「長徳®」は長く使えて、サステナブルなオイルへと生まれ変わった。

その象徴として、同年6月には「長徳®キャノーラ油」で、国際規格に準拠したCFPマークを取得。原材料調達から廃棄に至るまでの全ライフサイクルにおいて、CO2排出量を算定し、「長徳®キャノーラ油」は従来の菜種油と比較してCO2排出量を21~26%抑制することを確認(当社調べ)。業務用の食品では先駆けとしてCFPマークを製品のパッケージに記載し、冒頭に記したように小売店や外食店で、環境を考えた油を使用していることを訴求する取り組みも始まっている。

その以前から「長徳®」シリーズは原料穀物の使用量、ひいては農地や水資源の有効活用につながること、原料穀物の輸送や最終製品の配送に係るCO2削減に貢献できることはわかっていたが、CFPマーク取得の推進役を務めた業務用油脂マーケティング部の鈴木豪氏は「実際にCFPマークを取得することで、サプライチェーン全体のCO2排出量を見える化することができました」と振り返る。

「長徳®キャノーラ油」を皮切りに、現在ではシリーズ各アイテムでCFPマーク取得を順次拡大中。「当社もサステナビリティ経営を推進していますが、得意先企業でも商品選択の基準に環境への配慮を打ち出す企業が増えており、CFPマークを取得したことで得意先との取り組みが広がっています」という。

大手小売業の惣菜売場での「環境を考えた油で揚げています」というメッセージ訴求を筆頭に、外食チェーンや社員食堂などで長徳®のCFPマークをPOP等で掲示し、環境配慮を打ち出す店舗も増えている。

鈴木氏は「「長徳®」をはじめ、あらゆる分野でサステナブルな取り組みを加速させており、環境への取り組みは当社が業界でも先駆けと自負しています。これまでも得意先企業のさまざまな課題解決に寄り添ってきましたが、サステナブルな社会の実現に向けて、多くの皆さまといっしょに取り組みを広げていきたい」という。

「長徳®」シリーズの提供価値

「長徳®」シリーズの提供価値の画像
CFPマークの画像 CO2の「見える化」
カーボンフットプリント
https://ecoleaf-label.jp
JR-BE-20002C

当社の業務用商品「長徳®」シリーズ、CFPマークを取得
https://www.j-oil.com/press/article/220613_003302.html

さらなる進化への挑戦

イノベーションで社会に貢献

「長徳®」シリーズの誕生から今年で16年目。今ではJ-オイルミルズの業務用油脂の主力シリーズとして順調に販売を伸ばしており、サステナブルなオイルとしてマーケットでの存在感も高まっている。

同社では「長徳®」シリーズのさらなる進化に向けた開発体制を強化。昨年にはSUSTEC®3の「長徳®」の機能を上回り、一般的なフライ油と比較して 酸価上昇と着色を4割抑える(当社調べ) SUSTEC®4の「すごい長徳®」シリーズを発売した。

研究開発の現場では、次世代を担う若手メンバーも増え、さらなるイノベーション創造に向けた活発な取り組みが進んでいる。

入社4年目となる業務用油脂マーケティング部の小原如恵氏は、入社以来ずっとSUSTEC®の研究開発に携わってきた。商品化技術の検討や、ラボでの成果を実際の生産ラインに落とし込むための技術整備、得意先向けのデータづくりなどを担当している。

研究室には2001年の開発当時からの膨大なデータとノウハウが蓄積されており、「参考になることがとても多い」という。「簡単ではないですが、先輩たちが作り上げた「長徳®」の機能をさらに進化させて、お客様や社会に役立つ製品を実現していきたい。より長持ちするだけでなく、「長徳®」がこだわってきたおいしさを進化させ、お客様に納得いただける製品を開発していきたい」と夢を語る。

研究開発センターの青木亮輔氏は入社10年目の若手リーダー。入社以来、静岡工場で製造するマーガリンや加工油脂の製品開発に携わってきたが、昨年から横浜工場に拠点のあるイノベーション開発部に異動。これまでの固型脂や加工油脂とは異なる分野である、「長徳®」をはじめとする液油を中心とした新たな素材開発のための基礎研究を担っている。

「業務用フライ油は当社のコア製品であり、SUSTEC®の技術をさらに広げ、多くのお客様に役立つ製品を提供していきたい。そのためには、イノベーションを支える基礎研究を通じて開発チームをサポートしていきたい」と語る。

新たな技術開発を進める課程では、研究室での作業に没頭していると視野が狭くなりがちなこともあり、カスタマーリンケージグループなどお客様と接する開発メンバーとの交流が重要という。お互いが持つシーズとニーズを融合することで、新たな方向性が開けてくることも多いという。

貴重な食資源を有効活用し、おいしさを高め、働く人の労働環境や地球環境の負荷を軽減する「長徳®」の可能性はますます広がっている。2019年にはJ-オイルミルズの研究チームと、油脂の酸化の研究で世界の最先端を誇る東北大学の仲川教授との共同研究講座もスタートした。油脂の長寿命化によって、サステナブルな社会の実現に貢献したい。J-オイルミルズの挑戦は始まったばかりだ。

取材メンバーが並んだ画像

油脂業界で環境と言えばJ-オイルミルズと言われることを目指して挑戦は続く


2023年8月25日 食品新聞社 岩下直樹